もしこういうことがあるとしたら…アイリンだと思っていました。「ゴージャスアイリン」ならあり得るなと。もしくは「武装ポーカー」のリメイク。
まさか・・まさかの原作と作画が荒木先生ではない荒木先生の作品!!(ややこしい)
まさかビーティーが来るとは。
しかも魔少年ではない!魔老紳士になっておる!
ウルトラジャンプ11月号に掲載されている読み切りである「魔老紳士ビーティー」の感想です。ジョジョリオンが終わってしんみりしていた所に荒木先生に関係のある読み切りを入れてくるなんて集英社め、やるじゃないか・・・しかも原作が西尾先生で作画が出水ぽすか先生なんてかなり安定した組み合わせ・・・
ん、西尾維新・・・
どうかな?西尾維新・・・
いや、断っておきますが僕は西尾先生のアンチじゃありませんよ。戯言シリーズも好きだし物語シリーズも読んでるし、あの分厚い伝説シリーズも読み切って「ジャイアントインパクト」という単語が頭から離れなくなってしまったり、りすかとかも読んでます。控えめに言っても西尾先生のファンです。
漫画原作でいうなら「めだかボックス」も好きでしたよ。あれに出てくる球磨川禊とか安心院さんなんてまさに西尾維新にしか生み出せないのではないかというキャラクターですし、原作も安定してるとは思うんです。
ですがそんな西尾先生の作品で僕が唯一「?」がついたのが「OVER HEAVEN」なんですよ。いや悪くはないんです。たぶん僕の期待値が高すぎたんです。ただ、あれを始めて読んだ時の僕の感想は、なんとなく西尾先生らしさがあまり出てなかったなというものでした。西尾先生がジョジョ好きだというのは作品からも伝わってくるので、もしかしてジョジョに関係する話ということで好き放題できなかったのかな〜なんて勝手な想像をしていました。
前置きが長くなりました。それでは感想いってみましょう。
率直なネタバレなしの感想
率直に言えば面白かった!なんというか、遊び心が満載の作品。
ネタバレなしで意見を言えばジョジョのファンなら読んだ方が良いと思います。話自体はあくまでもビーティーの話でありながら、台詞や作画のあちこちにジョジョのオマージュが詰め込まれており、ときどきクスッと笑ってしまう台詞が多いです。ストーリー自体も今の現代風な要素が詰め込まれており、魔少年だったBTが魔老紳士に成長して、時代も流れたことがわかりやすいエピソードになっています。
ストーリーについての感想
ストーリーは良かったと思います。少なくとも僕は好きです。台詞回しに若干の西尾維新らしさを感じながらも、ジョジョの台詞を効果的に取り入れて、短編らしくシンプルながらもスリリングな展開先を読みたくなるようなテンポの良いストーリーはとても楽しく読むことができました。作品自体の湿度がカラッとしているのでいい気分で読むことができます。西尾先生はもしかするとエグエグしい話を持ってくるんじゃないかと思っていましたが杞憂でしたね。
作画についての感想
作画に関してもとても良かったです。主人公であるビーティーや相棒である光一くんの作画は昔の荒木先生のタッチをそのまま洗練したようなタッチにしており、その他のモブキャラたちは出水先生のオリジナルのタッチで描かれているので、オリジナリティも混ぜ込んだ絵柄になっております。
全体的な雰囲気の違和感もなく、各所に散りばめられた見覚えのあるアイテムのおかげで荒木先生が書いたと言われても違和感のない作画になっております。
むしろ荒木先生本人ではここまでジョジョの要素を詰め込むことは難しいのではないかと思えば、こういった遊び心の詰まった短編は原作と作画が荒木先生ではないからこそ出来上がったものだと思います。
ネタバリありの感想
魔老紳士ビーティーのキャラクター
ビーティー
主人公。相変わらず頭が切れて、現代のテクノロジーも使いこなしています。
頭脳が悪魔的ながらも性格はさっぱりしていて友達も大切にするためとても好感の持てる老紳士になっております。「だが承る」という名言が誕生しました。
麦刈公一
詐欺に引っかかったりいろいろ焦ってますが、イカサマの片棒を担ぐあたり成長した公一くん。
ビーティーの妻
シルエットがリサリサっぽい
詐欺グループのボス
最初ディアボロっぽいシルエットだったけどその正体はそばかすの不気味少年。
魔老紳士ビーティーのストーリー
冒頭から「そばかすの不気味老害事件」ってなにそれ!?って話ですよね。これはオリジナルの魔少年ビーティーのそばかすの不気味少年事件を知っている人はピンとくるのかもしれませんが、僕はオリジナルのBTを読んだことがありません。ゴージャスアイリンに収録されていた短編しか読んだことがないので残念ながらピンと来ませんでした。
冒頭の数ページで公一くんはどうやら詐欺にあったことが伺えます。手口としてはよくある話で老後の不安を煽り高額な物件を買わせ、法外な借金を背負わされ、担保にしていた家をを取られると言う内容になっています。リアリティがありますね。実際買わせられた物件に足を運んでみると内覧した時とはまるで違う家がそこにあり完全なボロ家をつかまされたことになっております。「家と家との等価交換トリック」(線路で家ごと物件を入れ替える)で公一くんは騙されたのでした。しかしまあ、交換ではあるけど等価交換ではないよね!ワードとしては好きなんだけどさ、等価交換。
そこで BT はその物件から高額な宝石が発見されたということを動画で公開し犯人たちをおびき寄せることに成功します。「追うことができないなら追わせるのが良い」うーんワンダーオブUですね。新鮮なネタですわ。そして二人組のうちの一人を睡眠導入剤で眠らせアジトや首謀者を履かせると言う行動に出ます。ちなみにこの時のカップはウェッジウッドのハンティングシーンです。4部の川尻しのぶが大切にしていたカップと同じですね。睡眠導入剤即ガシャアアアアンもどうかとは思うけどまあ、その辺のツッコミはなしで。
詐欺グループのアジトではボス謎のボスがここを撤収するというのですが直後にビーティーたちの乗った車が突っ込んできます。アクセルとブレーキを踏み間違えたようです。よくあることですね。
ここのシーンは「変人偏屈列伝」で見かけたような感じがしますが気のせいでしょう。
詐欺グループの首謀者は60年前にビーティーがやっつけたそばかすの不気味少年だったということです。コインの裏表の枚数の差を賭けるというギャンブル勝負になります。くだらないと言いながらも「だが承る」と言って乗るビーティー。ルールは一見単純なんですが、しくみや数の計算は結構複雑ですので僕は考えるのをやめました。こういうすごく考えるのが大変なこと思いつくのが西尾先生の凄いところですよね。結果ビーティーはイカサマにより勝利を収めます。敵は武力行使に踏切りますがなんと自動運転の車が突っ込んでくると言うこれまた今風の対処法で詐欺グループのボスをやっつけます。
最後はビーティーと公一くんが歩いて帰るというさわやかな展開で物語は終わります。
作中の小ネタ集
見逃しは勘弁を・・
- 冒頭部 「我われはこの老人を知っている!」
- 車内のアイテムたち クラッカー、バンダナ、赤石、てんとう虫ブローチ、矢、ジャイロの鉄球、石仮面、ロカカカ、デーボの人形
- 公一くんの家「立禁止」
- 詐欺師のチラシに「安心を得るために生きる」
- ビーティーの車内にココジャンボ
- 火事が起きたら全焼
- ドジャアーン
- 車内にストレイキャット(猫草)
- 家と家との等価交換
- ボヨヨン岬
- ベネ(良し)
- 「敬意を払って奪い取れ!」
- 東洋の秘薬
- 183歳(DIO?)
- 窓際にソフトアンドウェットっぽいフィギュア りんごむいてる
- 追うことができないなら追わせるのが良い
- ウェッジウッドのハンティングシーン
- ゴク!
- OH MY GOD!!
- だが承る
- あちこち駆け回って必死に収穫(ハーヴェスト)
- ししししししししししっ!
- プレップレップレップレッ プレッシャアー
- 勝ったっ!第3部完!
- なんの合図もなしに通じてくれてうれしかったぜ
- 見ているな!安全確認横断歩道
- 安全運転 安心感を与えてやろう
総まとめ
こうやってまとめてみると、漫画の内容もさることながら絵の中に書かれている細かいネタを探すのもとても楽しい短編だと思います。
個人的には、詐欺師が出したチラシの「安心を得るために生きる」と言う吉良吉影のためのプランが載っているチラシと、最後の中央警察署の標語として掲げられている「見ているな!安全確認横断歩道」と「安全運転 安心感を与えてやろう」というDIOが応募したような標語ツボでした。
おそらくオリジナルである魔少年ビーティーを読んでいるともっと楽しめたのでしょうが僕は見ていなかったのでこの話を見る前にオリジナルを読んでおけばよかったと少し後悔しています。まだ未読の方はオリジナルを読んでからこの魔老紳士を読むのもいいと思います。
これだけネタが豊富に詰まっていてよく考えられた話であれば是非続編を作ってもらって、たまにウルトラジャンプで掲載してもらうと個人的にはとても嬉しいので続編が登場することを願っております。
当サイトでは、ジョジョリオンの感想考察や、岸部露伴シリーズの感想考察も書いております。ぜひ他の記事も覗いてみてください。